認知症が世界を変える

認知症の傍に四半世紀。日々医療の現場で認知症に思う、私の現在・過去・未来。

2019-01-01から1年間の記事一覧

どうしたらいいですか?

同じテーマ(課題)に向き合っている人とは、 気付くポイントが似てくるので、話が早い。 「これは課題だ。」と思うことに、課題性を見つけてくれる。 「課題」が何なのか、それを互いに理解し合えれば 「答え」や「手段」を一緒に探すことができる。 その出来…

引き寄せの法則?

朝、頭がまだ目覚めていないとき、 ipadで漫画を読む。 ありえないシチュエーションにワクワクしていると、 自然に目が覚めている。 このワクワクという情動は力強い。 診察室で、最近私をワクワクさせてくれるのは、 ズバリ、肩こりと頭痛。 みるみる治って…

年齢相応、リアル・アラ9

88歳でも、背筋を伸ばして社交ダンスやカラオケをたのしむ、酒豪女子がいる。 90歳を過ぎて、投げ技をきめる男子がいる。 ろうろうと戦争体験を語る男子、 手作りの大根でお漬物を振る舞う女子、 自炊男子、夜遊び女子、浮気男子、先生女子… 皆んなテレビの…

救急搬送のホンネ。

認知症の患者さんが、 妄想や怒りに身を任せていたり、 あまり理解はできなくても、 色々と御自身の思うところを蕩々と語る姿は、 私を心から安心させる。 なぜなら、概ね身体が元気な証拠だからだ。 一旦身体の具合が悪くなると、 特に、レビー小体型認知症…

悪夢

胸の中心が詰まるような、 締め付けられるような息苦しさの中で、 明け方、目が覚める。 そんなとき、決まって見ている夢の中身は、 困って、助けを求めているように感じる、母のこと。 そのリアリティに、 毎回、目覚めた私は、母はずいぶん前に他界したは…

疲労感の原因

相手に何が必要か、相手が何を求めているのか。 それがわからぬまま、闇雲に、可能な限りの手を尽くそうとするのは、、、 尽くさなければ、と考えることは、、、 本当に 疲れる。 手探りの宝探しとは全然違う、 手探りの、泥の道造りみたいな、 その先にある…

物取られ妄想

あるはずの物がない時 物が無いことが自分のせいとは考えられない時 つまり、自分に思い当たる節がないとき 誰か物を持って行った人がいるかも、と考えるのは 仕方がないことかも知れない。 途中誰かに貸した記憶があって、 その人が「犯人」かもしれない、…

scansnap

気になる切り抜きや、 クリニックで保管すべき書類を、 事務方へ丸投げせずにデジタル化すべく、 専用のスキャナーを設置。 複合機に干されかかっていたが、 複合機のそれとは別次元に便利で。 ScansnapとMacの「プレビュー」アプリがあれば、 頭の中と書類…

開業記念。

2019年10月15日。 これまで認知症と関わり、 抱えてきた沢山の思いを、 世界に向けて全て解放するために、 クリニックをオープンした。 妄想2年。 準備期間3ヶ月半。 「認知症」は私の世界をどう変えるか。 新たな旅の始まりとその記録。

介護者のできること〜家族の場合。

「地獄への道は、善意に敷き詰められている。」 ほんの2~3年の間に、認知症は軽度から高度になり、寝たきりの後他界してしまった祖父。 大手企業、省庁、医歯薬業、社会福祉貢献、普通以上に社会参加できる常識的な子供を持ち、 いわゆる、社会的入院のルー…

改) 介護者のあるべき姿

「地獄への道は、善意で敷き詰められている。」 介護施設で見た光景は、なんとも奇妙なものだった。 介護職員さんはみんな笑顔で優しく熱心だった。 本当に甲斐甲斐しく、利用者さんの衣類の着脱から洗濯物から入浴、排泄の介助まで、 転ばないように、ケガ…

認知症に成り行く者

祖母が他界して数年の一人暮らしの後、幻覚妄想から住み慣れた家を離れ、子供達の家へ移り住んだ祖父。 毎日塞ぎ込んで、くよくよメソメソしていた祖父。 年の近い他人である私の父に煙たがられ、母の兄弟の家に移った祖父。 祖父が身を寄せる叔父の家の玄関…

認知症かどうかが知りたい:追記あり

「ご家族は、こちらの患者さんが認知症かどうかを知りたいそうです。」 とある認知症外来で、このセリフを耳にして久しぶりに覚えた違和感。 「『認知症』かどうかがわかったら、何なのだろうか?」 検査の結果、限りなく認知症と呼ぶに相応わしい微妙な認知…

病気だから変わったのか、居場所が違うからなのか。

ある日突然、夜の幻覚妄想に襲われ近所に助けを求めた明治生まれの祖父。 springplanting.hatenablog.com その時、すぐに病院に連れて行かれたのかどうかは覚えていない。 近所迷惑だから家に一人で置いておけないと、祖父が我が家へやってきたのは私が高校…

私と認知症との出会い

今日は牡羊座の新月。 望むものにフォーカスすれば、新たなスタートにパワーをくれるとのこと。 望むもののヒントは望まないことにある。 私が認知症を見つめ続けた理由も、望むものを求めた結果だった。 改めて、今の自分を確認する為に、過去を遡り、望ん…

勝手知ったる

私が出会ってまだ10年にも満たないけれど、既に100歳を超えた恩師に会いに行った。 身体の衰えと、認知機能の低下があり、1年弱の入院生活。 その間、人伝に沢山の本を頂きながら、何かと敷居が高くお見舞いに行けずにいた。 すっかり別人になっているかと思…

認知症の終末期医療について考えたこと

あることをきっかけに、認知症の終末期医療について改めて考えてみた。 springplanting.hatenablog.com springplanting.hatenablog.com 胃瘻導入についての意思決定支援として公式に公開されているガイドラインは2つある。 いずれも、認知症本人にとっての最…

認知症の延命治療:追記

「胃瘻をいれた状態での自然な死というのもあるのではないでしょうか。」 「一つの機能を失っても、生きて行ける方法があるならば、それを選択したいと思います。」 認知症の終末期、栄養や水分を口から摂取できなくなった家族を前に、呟かれた言葉たち。 ア…

認知症の寿命

認知症には寿命がある。 高齢者認知症の原因で、もっとも多いのはアルツハイマー病。他にレビー小体病、前頭側頭型認知症と共に、変性疾患という、脳の神経細胞が徐々に少なくなって行く病気だ。 主に大脳皮質という、脳の最外層がその機能を失って行く。 脳…

自閉症の僕が飛び跳ねる理由

ちょうどユマニチュードやナラティブ・ケアが紹介され始めたころ。 施設内を行き交うスタッフを目で追ったり、宙を眺めたりしている諸先輩方に、言語性コミュニケーションを試み、彼ら彼女らの心の場所、認知症とそれ以外のもを探していた。 中には、失語で…

認知症の人とのコミュニケーション

介護老人保健施設での勤務は、緊張の連続だった。 求められている役目や仕事は何か、ドキドキしながら探していた。 そんな私は、施設で過ごす人生に大先輩たちと、 挨拶ができること、目が合い微笑みあえること、 この2つにどれほど救われていたことか。 認…

それ、認知症と関係ありますか?

時にレポート用紙何枚もにわたり、認知症の人の暮らしぶりを書いてくれる介護者がいる。 多くは記憶違いや幻覚・妄想、怒りっぽさなど認知症一般に見られる状態。 認知症の本人が自覚していることもあるし、身に覚えがないと言われることもある。 介護者の戸…

言葉の抽象化

認知症を診断するための検査のなかに、前頭葉という脳の前半分の機能を調べるFABがある。 その一番最初の問題が言語の抽象化能力を調べるものだ。 どういう問題かというと、例えば、 問題:人生ゲームとモノポリー 答え:ボードゲーム のように、複数の物事…

はじめての認知症外来

受診の目的がはっきりしていない診療には時間がかかる。 病院に来るまでには、何らかのいきさつがあったのだろう。 問診票の主訴の欄には特に記載がない。 困りごとの相談ですか?と質問すると、「勧められたから。」と主体的ではない様子。 生活の様子を伺…

認知症の定義と運転免許

springplanting.hatenablog.com 前回に引き続き。 診断する側) 恐怖心 + 職責・義務 vs される側) 恐怖心 + 自尊心 この構図を今の認知症の定義に当てはめて使われるロジックの一つは、 「認知機能は低下しており、病気かもしれないが、生活機能は保たれてい…

運転免許取り消しの診断

認知症と診断されると運転免許を取り消されることになっている。 「あなたはこう言う理由で認知症と診断されます。」 理想「ハイそうですか。わかりました。返納します。」 現実「認知症かどうかは知りませんが、運転はまだ出来るし、〇〇歳まで(又はあと2〜…

『認知症』とは何だ?

そもそも「認知症」という日本語は何を示すのか? 勉強会用のスライドをつくる度に自分の中で沸き起こる混乱を、どう頑張っても長らく上手く言語化できなかったことが、私の認知症への対応をどこかで曖昧にしていたように思う。 一般的に認知症という言葉は…

新月の宣言

2019年3月7日。魚座の新月にこのブログを書くことを決めた。 日々、認知症を疑われる方、認知症と診断される方とばかり向き合ってきた。 ここ数年は特にそれでしかご飯を食べてない。 医療の現場、介護の現場、日常の生活の場所。 色々な場所で出会う「認知…